SES事業者様からの質問に対する回答
当協会の代表理事の中野は、法律事務所と社労士事務所を経営しています。
そこで、たくさんのSES事業者様からの相談を受けています。
そこで今回は、SES事業者から受けた質問と、その回答をしたいと思います。
【質問】SES契約書に「必須記載事項」はあるのか?
SES契約をする上で、必ず記載をしなければ「偽装請負」となっていしまうというような、必須記載項目というものはあるのでしょうか?
【回答】記載がなければ「偽装請負」というものはない
契約書に記載がなければ即「偽装請負」になる、といったものはありません。
その理由は、労働局による「偽装請負」の判断においては、契約書等に特定の記載があるかどうかではなく、「実際に現場がどうであったか」が重要であると考えられているからです。
望ましくない記載(「派遣」や「労働」など)があったとしても、それだけをもって直ちに「偽装請負」となることはなく、
このような記載に対して「実際どのように運用されていたのか」という部分を見られます。
反対に、一切望ましくない記載がなかったとしても、実際の運用で「望ましくない運用」がされていれば、それをもって「偽装請負」と判断される可能性があります。
「契約書に書いておけば、とりあえずOK」という考えではなく、実際の現場の状況についても目を向けて対応をする必要があるのです。
【point】とは言え、各種条項はあったほうがより良い
「偽装請負」とは、平たく言うと、業務委託(準委任・請負)にもかかわらず、派遣と同じようなことをやることを総称してさします。
反対に言えば、一見派遣のような状態でも、法律上の業務委託の要件を満たしてれば、それは派遣ではなく業務委託であると言えるわけです。
従って、法律上の業務委託であることが明確であれば、「偽装請負」と判断される可能性が非常に低くなると言えます。
では、「業務委託であることを明確にする」とはどういうことなのか。
それは、契約書に業務委託において発生する特有の事項を定めていることです。
法律上の業務委託において発生する特有の事項としては、「善管注意義務」や「契約不適合責任」に関する事項、また、「損害賠償」の規定などがありますが、これらが定められていると、第三者(労働局)としては、書類上においては業務委託契約に受託しているものであるとわかります。
もしこれらの規定が一切なければ、業務委託契約かどうかもわからない状態であり、より慎重な調査が必要な案件として認識されてしまいます。
上記回答では、記載をしていなければ「偽装請負」となる事項はないとは言いましたが、とは言え、各種規定がないよりは、あったほうが偽装請負対策としてはより良いと言えるでしょう。