SES事業者への労働局調査。通知~当日までの流れや必要書類、とるべき対策とは?


労働局による偽装請負の調査は、必ずしも違反があることを前提としているわけではありません。

もちろん、通報やタレコミなどにより違反を前提としている場合もありますが、定期的な実態調査として行われることもあります。

当会や法律事務所でも、「どのような流れで、どういう準備をしなければならないのかを、知っておきたい」といったご相談を多く受けております。

そのため、今回は、「労働局の調査が決定した場合、どのような流れで進み、調査当日までに何をすべきか」について、解説を致します。

調査全体の流れ

偽装請負の調査は、次のような流れで行われます。

  1. 【労働局】調査を行う旨の事前連絡(ない場合もある)(電話であることが一般的)
  2. 【労働局】調査を行うための正式な通知(書面)
  3. (事業者)全ての業務委託、派遣、出向等による作業者一覧を労働局へ報告
  4. 【労働局】全ての業務委託、派遣、出向社員から、数社分の取引をピックアップ
  5. (事業者)ピックアップされた対象者の関連書類の準備、状況の確認
  6. 【労働局】調査当日の質疑応答(ピックアップされた対象者のみ)
  7. 【労働局】処分の検討・決定(調査日より数週間後)(再調査や反面調査などがある場合もある)
  8. (事業者)是正に対する対応・報告
  9. 【労働局】再是正又は是正完了による終了通知

労働局からの通知内容

担当官によって内容が異なることがあり、統一の形式ではないようですが、おおむね下記のような通知が届きます。

労働局からの通知

調査が決定してから、最初にやること

調査が決定してから最初にやることは、該当する取引先情報の一覧を共有することです。

その中から数社分の取引についてピックアップをし、別紙に要求する書類と当日の質問により、調査を行うといった形となります。

取引先情報の共有については、上記通知とともに、下記の様式例が送られてくることが一般的です。

基本的には、従業員ベースでカウントをします。

ピックアップされる数については、おおむね2~3人分であることが一般的です。

上記を提出後、労働局から、今回の調査対象とする取引を指定する旨の連絡があり、その指定された取引分のみ別紙により要求される書類を用意することとなります。

調査当日までに用意する書類

ピックアップされた取引先との書類については、上記通知とともに、おおむね下記の内容の別紙が送られてくることが一般的です。

書類準備~調査前日まで

上記書類の準備とともに、以下のような用意をすることが考えられます。

①調査に同席する担当者の決定

労働局からの要請などがなければ、ピックアップされた取引の担当者や責任者などを同席させる必要はありません。SES事業の責任者や役員などで対応可能です。

ただし、多数質問をされるので、ピックアップされた取引について詳細を把握しておく必要があります。

担当官が疑問に思ったり、質問に答えられないと、再調査や担当者本人の同席などを要求されるなど、全体として時間や手間が増えてしまうことになります。

弁護士を同席させることも原則可能ですので、この段階で検討・依頼をすることになります。

②現状の把握

用意した書類をもとに質疑応答をすることになりますが、「実際どうだったのか」ということをよく聞かれます。

書類に記載がない事項についても聞かれることがあるので、そういった事項は現実にどのように行っていたのかを、よく確認しておく必要があります。

③質疑応答時の想定問答

案件について理解をしている方が同席するのであれば、ぶっつけ本番でもよいかもしれませんが、そうでなければ、想定問答などを用意しておくことなども考えられます。

よく聞かれる事項については、【SES事業者が、労働局の調査当日に聞かれることは?当日の流れは?】にまとめてあります。

調査当日

当日は、上記で用意した書類をもとに、その場で質疑応答を行います。通知書にもあるとおり、大体2時間くらいを要します。

対応する担当者が答えられない場合、当日に調査対象取引に関係する人(責任者や技術者)がいれば、同席をお願いされることもあります。

当日に是正の決定は行われないので、最終的には書類を持ち帰り、後日結果について通知されることとなります。

絶対NGなこと

書類の隠匿や改竄、質問に対する虚偽の申告は、絶対に行ってはなりません。

初めての調査であれば、偽装請負に当たる行為があったとしても、罰金社名公表などの重い処分を下されることは、ほどんどありません。

是正(修正)をすれば、おとがめなしといった形です。

しかし、隠匿や改竄、虚偽申告などがあると、1回目の調査でも罰金や社名公表などの行政処分とされる可能性が高くなるので注意が必要です。

通報(タレコミ)による調査であった場合には、あらかじめ、通報者から書類を得ていたり、事前聞き取りが行われている可能性があります。こういった場合、通報者からの話や資料と突き合わせて調査をすることになります。

したがって、回答や書類の食い違いがあった場合には、すぐにわかるのです。

偽装請負に明確な判断基準はない!

ここまでがOKで、これ以上はダメ!といった明確な基準はなく、「偽装請負か否か」を判断するのは、調査をする担当官が決めることとなります。

初めての調査の場合、誠実な対応をとれば、ことが大きくなることは多くありません。隠蔽工作などには走らず、真摯に対応するようにしましょう。

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